2009-06-05

『イノベーションの神話』、世界初のモノを作るということ

『イノベーションの神話』という本を読みました。普通の人が”イノベーション”というものに持っている常識を実例を挙げて覆してくれる本です。「何か今までにない新しいものを作り出したい」と思っている人にはすごく元気づけられる内容だと思います。 


 いろんなイノベーションの実例を挙げているのですが、その中でもPalm Pilotの開発中のジェフ・ホーキンスの話は感動してしまいました。

ホーキンスさんはPalm PilotというPDAを作るにあたって、最初にその製品の制約条件を考えたそうです。本の中では「問題解決よりも問題発見が大事」ということの例として書かれていました。良い制約条件を設定することは良いアイデアを出すことよりも難しい。

Palm Pilotの制約条件
  • シャツのポケットの収まること
  • PCとシームレスに連携できること
  • すぐ、簡単に使えること
  • 299ドルを超えないこと
(p.153)
その後、ホーキンスさんは素早く行動を起こします。
 ホーキンスはPilotの開発において、こういった木製モデルを実際に作成しました。タフな目標を設定したことで難関の枠組みづくりを終えると早々に、彼はガレージの作業場で鋸と彫刻刀を使ってモデルを作成したのです。これは簡単なことではありませんでしたが、先に制約があったおかげで、ある種のデザインはすぐに決定できました。(中略)こうして、ガレージでの作業を初めてから数時間後、彼は翌日職場に持っていくPilotのプロトタイプを作り上げたのです。
 彼はこれを常に持ち歩き、打ち合わせではいつも、完成した製品であるかのように使用してみせました。また彼は、この機器をポケットから注意深く取り出し、「書く」という仕草をした後、またポケットにしまったりして、チームのエンジニアたちや営業たちを困惑させました。

ここの部分が一番感動しました! そうだよなぁ、世界初のモノを作るには未熟でもいいからとにかく形にして、どんどん実際に使ってみるしかないんだよ! 本当に新しいモノは自分以外には必要性が分からないものなんだよなぁ。

ホーキンスさん自身はこのことをこういう風に言っています。

新製品や新サービスを心に思い描くことは、イノベーションにおいて欠くことのできない作業である。デザインや作成といった作業を始める前に、そういったものを使い、いろいろと体験してみなければならないのだ

ここ最近、iPhoneアプリ開発のためいろいろ勉強したりプロトタイプを作ったりしてるんですが、せっかくの新しいデバイスなんだから新しくて面白いアプリを作りたいと思っています。アイデアは大事だけど、それを試作して泥臭く試行錯誤するのはもっと大切なこと。これは私が下手なだけかもしれませんが、本当に思いついたばかりのアイデアって自分にも他人にもうまく説明できません。だから私のような人間はホーキンス的プロトタイプ指向な開発をしなきゃいけないと思いました。

もっと大げさに言うと何かモノ(ソフトウェア、小説、映像など)を作り出すということは、自分の心の中にある”狂気”をさらけ出すことになるんではないかなーと。生まれたばかりのアイデアはあまりにも自分の狂気が染みこみすぎているんで上手く人に伝わらない。アイデアを試作品などに落とす過程で洗練されて角が取れて、他人にも共有可能なくらい狂気が薄まる。そのアイデアから狂気を漉し取る作業は、思いついた本人以外にはできない。
なんだかすっごくやる気が出てきました! さあ、さっさとiPhone開発の基本を覚えちまってたくさんプロトタイプを作るぞ!

この本は、「新しいモノを作り出したい」と思っている人にはおすすめです。

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