2008-02-25

村上龍「ストレンジ・デイズ」

「マーロン・ブランドはいろんなことをやっていて,演技とか映画とかは自分の人生のほんの一部分だって言ってる,大したことじゃないって言い方もしてて,それが嘘っぽくない,でもうらやましいのはね,そういうことを,つまりインディアンのためにね,戦うってことを素直にすぐやるんだよ,(中略) マーロン・ブランドはそのことにものすごく自然に怒りを表すの,私がうらやましいのはそこだよ,おかしい,変だ,そういうのは許せない,そうやって実際に行動に移していくの,タヒチの島を買ったときでも,映画の撮影でタヒチに行って,そのあたりの景色や雰囲気や人々が好きになったって言って,すぐに,島を,買っちゃうんだよ,まるで・・・・・・」

(中略)

「ああいうふうに,マーロン・ブランドみたいに生きていない自分にすごく腹が立った,マーロン・ブランドは特別なんだろうかって考えたよ,なぜ自分はマーロン・ブランドみたいに子供のような欲求を持って,それをすぐに実現させながら生きていないんだろうって,考えたんだよ」

(中略)

島が欲しい,と思ったとするよね,あるいはインディアンを助けたい,と思ったとします,さて問題,それを実現するためにもっともエネルギーとなるのは何でしょう? じゃあ,聞き方を変えるけど,人間が本当に必死でがんばる時ってどんな時でしょう?」
「必死,か」
「必死って,必ず死ぬって書くんだよ,死ぬ気でがんばるってよく言うけどわたしはそれは違うと思う,いい? もし,島を買うことができない時は,それは自分にとって死と同じだと思うことなんだよ,もっと言っちゃえば,島を買いたいと思ったときに,島を買おうとしない自分をものすごく憎むってことだよ,そんな自分は絶対に許せないって強く思うことじゃないかな,死ぬ気でがんばるっていうのはイージーだと思うな,がんばってできなかったら死んでごめんなさいすればいいんだもん,何かを実現させたくて,それで実現できない自分を絶対に許せないっていう風に考えると,死んだりできないよ」
 その通りだ,と反町は言った。
「死ぬ気でがんばろうなんて考えないで,まずできることは何だろうと,そう考えると思うんじゃないかな,私は出会ってからの,今までのソリマチさんのことを考えてみたんだ,ソリマチさんはそうしてるよ,そうしてると思った」
(中略)
 わかる,と反町は答えた。ジュンコは非常にわかりやすい正確な言い方をした。何かをやりたいという欲望を肯定する,それが実現できない,または実現しようとしない自分を絶対に許さない,実現のために,今できることは何かを考える,そしてそれをすぐにやり始める・・・・・・

村上龍「ストレンジ・デイズ」より引用、強調引用者)


私は村上龍氏の作品がかなり好きです。そのなかでも一番好きなのがこの「ストレンジ・デイズ」。はっきり言っちゃうと小説としては筋の流れが迷走気味だと思うけど(村上先生ごめんなさい),引用したような素晴らしいメッセージがちりばめられていてとても感動しました。

引用の一節は,自分が落ち込んだときに必ず読み返す部分です。気分が落ち込んだときはこの「ストレンジ・デイズ」を読み返してます。なんつーか終わり方もすごく好きです。

「必死」と「死ぬ気でがんばる」の違いはとても重要だと思いました。俺も「必死」で何かをがんばるようにしたいと思います。


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