2008-02-25

村上龍「空港にて」

二十代の二人が新婚旅行の楽しさをメールでそれぞれの友人に書き送る。それはごく自然なことだ。初老の女が無表情で連れ合いが喫煙コーナーから戻るのを待つのもごく自然なことだし,孫に焼き殺された老婦人に対してワイドショーの出演者が同情するのも自然だ。だが三十三歳で子持ちでバツイチで風俗で働く女が,地雷で足を失った人のために義足を作りたいと思うのは異常だ。だから誰にも言えなかった。

村上龍「空港にて」より引用)

よく分からないけど,日本という国は自分のことを普通だと思っている人間には心地よい暮らしやすい国だと思います。でも自分のことを普通でないと思っている人間にはとても辛い暮らしにくい国だと思います。「みんなが普通だ」という前提でいろんな物事が決められているから。
村上龍の「空港にて」を読んでそう思いました。

あとこの「空港にて」という短編集は小説の技巧的にも面白かったです。ある一つの情景を丹念に描写する,その隙間に主人公の人生を挟み込んでいく。そうやることである人物の大事なことだけを書くことができる。村上龍氏は「時間を凝縮する手法」と呼んでいたけど,小説を書く上での参考になりました。今度この技法をパクってみる!

まぁ,短編集で薄いし一つごとが短いので,読んでみたらいかがでしょうか。

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